
上司から”PDCAを回せ!”と言われたけど、具体的に何をすればいいかよくわからない…
店長さんの中には上司やオーナーから「PDCAを回せ!」と言われた経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
一方で、店長を指導するマネージャーの立場の方でも、
「店長が自立的にPDCAを回せるレベルまで育成したいけど、どう教えたらいいかわからない…」
という悩みを持たれている方が多いのではと思います。
ちまたにはPDCAに関する情報が溢れていますが、それを身につけることは容易ではないのです。
この記事では、大手リラクゼーションチェーン店でエリアマネージャーとして店長指導をしている私が、店舗で成果を出すためのPDCAの回し方について解説します。
この記事はこのような方向けに書いています。
・店舗で成果を出すためのPDCAの回し方を知りたいと思う店長さん
・行き当たりばったりの店舗運営から脱却したいと思っている店長さん
・部下にPDCAを指導するコツを知りたいマネージャー職の方
では早速本題に入りましょう!
目次
PDCAとは
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まずは、そもそも「PDCAとは何なのか」「なぜPDCAを回す必要があるのか」について解説します。
「PDCA」とは、PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(改善)の4つの頭文字をとった略語です。
そして「PDCAを回す」とは、狙った成果を出すために、「PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(確認)→ACTION(改善)」のループを繰り返すことです。
PDCAとは
成果(売上目標など)の達成のために、以下のサイクルを回すこと。
- Plan:目標と現在のGAPを埋めるための計画を立てる
- Do:計画を実行する
- Check:中間チェックを行い、計画通りに進捗しているかを確認する
- Action:Checkで確認した状況について改善点を考える
Actionまで進んだら、またPlan→Do→Check→Action…と改善を繰り返す
では、そもそもPDCAサイクルを回す目的は何でしょうか?
結論を言いますと、PDCAサイクルを回す目的は、店長としての成果を出すためです。
つまり、PDCAサイクルを回し続け、改善に改善を繰り返すことで、売上目標の達成を目指すのです。
しかし、現実問題としてこのPDCAが回し続けられる店長はごく僅かで、ほとんどの店長がPDCAサイクルを上手く活用できていないのです。
では、PDCAが回せないとどうなるのでしょうか?
PDCAが回せないことで失敗する、あるあるパターンを3つ解説します。
PDCAが回せない、失敗する店長3パターン

失敗する店長には大きく3パターンあります。
- 計画立てるけど、実行できてない(計画立てっぱなしタイプ)
- 計画と実行はするが、振り返りをやらない(現状維持タイプ)
- そもそも計画せず、行き当たりばったりで行動する(思いつき行動タイプ)
①計画立てるけど、実行できてない(計画立てっぱなしタイプ)
私の感覚では、半数以上の店長がこのパターンです。
最初に店長になるときに年間の計画や四半期計画をガチッと立てるのですが、いざ蓋を開けてみるとその計画はただの紙切れで、実際に運用されていないどころか、その計画を立てたっきりでその後取り出して見ることさえしていないのです。
このパターンの問題点は、計画を日々のアクションプランにまで落とし込めていないことです。
毎日やるべきことが明確になっていないため、その日その日の思いつきで行動することになり、当たり前に狙った成果を出すことはできません。
②計画と実行はするが、振り返りをやらない(現状維持タイプ)
これも店長あるあるパターンです。
実行までできている分いいのですが、上手くいってるかどうかの振り返りの時間を作っていないため、成長スピードが格段に遅いです。
例えば、今月は新規集客を増やすためにチラシ配布を強化する!と決めた場合、優秀な店長は効果測定をするためにチラシにクーポンをつけ、1日当たりのチラシ配布数と集客数を毎日記録します。そして1週間ごとに振り返りを行い、進捗がイマイチであればその原因を考え、クーポンの値引き内容を見直したり、クーポンのデザインを変更したりと短期間で改善を繰り返します。
一方で失敗する店長の場合、毎日のチラシ配布の目標数を決めて実行はするのですが、定期的に振り返りを行わないため、進捗が悪くてもその理由を考える時間をとらず、ひたすらチラシ配布を続けるのです。
この2者を比較すると、店長として成功するのは当たり前に前者ですよね。
③そもそも計画せず、行き当たりばったりで行動する(思いつき行動タイプ)
思いつきで行動するパターンも良くないのですが、このタイプも非常に多いです。
厳しい言い方をすると、店長としての軸がないタイプです。(私もこのパターンでしたが笑)
例えば、他店の店長から「チラシにこんなクーポンつけたら集客増えたよ」と聞いてすぐ真似て実行したり、「こんなイベントしたら集客うまく言ったよ」と聞くと次はそれをやってみたり。
他の良い事例を取り入れること自体は間違っていないのですが、その方法や施策が今のあなたの店舗のステージに相応しいのかどうかは見極める必要があります。
どんなに良い事例でも、店舗のリピーターを増やす段階にも関わらず、新規集客のことに時間を割いていたら、いつまでたってもリピーターの問題は解決しませんよね。
PDCAサイクルを回すポイント

ここまでの内容を読んで、「よし!今月からしっかりPDCAを回して、売上目標を達成するぞ!」と強く思っている方もいるかと思います。
しかし、PDCAサイクルを回して成果を出していくためには、いくつか重要なポイントを抑えないと失敗してしまいます。
そこで、この章ではPDCAサイクルを回す際のポイントを解説します。
Plan:目標と現在のGAPを埋めるための計画を立てる
①計画立案に時間をかけすぎない(計画自体には価値がない)
②計画を細分化して月次、週次、日次まで行動計画を落とし込む(5W2H)
①計画立案に時間をかけすぎない(計画自体には価値がない)
成果を最短で出すために最も重要なポイントは「PDCAサイクルを回すスピード」です。
そのため、計画を立てるのに時間をかけて悩みすぎるのは本末転倒です。
「失敗はしたくない!」と思っている人ほど、計画に時間をかけすぎる傾向にあります。
しかし、どれだけ緻密に計画を立てたとしても、必ずズレは発生します。
そのズレをいかに早く発見し、改善を繰り返していけるかが、最短で成果を出すために重要なのです。
②計画を細分化して月次、週次、日次まで行動計画を落とし込む(5W2H)
計画を立てる時は必ず、週次・日次レベルまで行動計画を落とし込みましょう。
そのために、行動計画は「5W2H」に沿って立てます。
5W2Hとは?
「Why,What,Who,When,Where」の5つの頭文字と、「How,How much」の2つの頭文字を取ったもの。
行動計画を立てる時に、計画にこの7項目を含めることがポイントです。
例えば、
「今月の計画は、リピーターを増やすためにスタッフの接客研修を行い、お客様の満足度UPに努めます」
のような計画だと、具体性がなく、これではリピーターが増えるイメージが全く湧きません。
一方で、次の行動計画はどうでしょうか?
「リピーターを増やすためにスタッフ研修を行い、お客様満足度UPを狙います。そのために月に2回店長による接客研修を実施、週に1回は各スタッフと面談し改善状況についてヒアリングとフィードバックを行い、毎日スタッフと接客ロープレを行います。」
「5W2H」を計画に組み込み、行動プランを日次レベルまで落とし込むことで、前者と比較しても達成イメージが湧きますよね。
なお、「計画の立て方をもっと体系的に学びたい!」という方は、以前、新人店長向けに計画の立て方を5ステップでわかりやすく解説した記事を書いたので、こちらを見て学んでください。
▶︎ 【新人店長向け】リラクゼーションサロンの計画の立て方を5ステップで解説
Do:計画を実行する
- 日次、週次、月次で計画通りに行動できたorできなかったを記録する
①日次、週次、月次で計画通りに行動できたorできなかったを記録する
DO(実行)でのポイントは「見える化」です。
計画で立てたアクションプランが実行できているかどうか、日々の進捗をデータとして記録するのです。
なぜなら、人間は忘れっぽい生き物なので、いつ何をやったかを明確に記憶しておくことが難しいからです。
この記録ができているかどうかで、次のCHECK(検証)での精度がかなり変わってきます。
Check:中間チェックを行い、計画通りに進捗しているかを確認する
- 週次、月次の各段階で検証を行う(中間チェック)
- データで判断する(成果基準を明確にする)
- 「なぜダメだったか」の理由を深掘りする(Whyを繰り返す)
①週次、月次の各段階で検証を行う(中間チェック)
必ず中間チェックを行い、計画通りに推移しているかどうかを確認する機会を作ります。
「振り返りは1ヶ月経ってからでいいや」ではダメなのです。
理由はシンプルで、改善のスピードが下がるからです。
中間チェックのタイミングは、最低でも週に1回は作りましょう。
②データで判断する(成果基準を明確にする)
進捗確認する際は、必ずデータ(数字)を元に良い・悪いを判断します。
間違っても、「なんとなく上手くいってる/上手くいってない」と感覚的に判断するのはNGです。
データでの判断が必要だからこそ、DO(実行)のフェーズで「見える化」することが重要なのです。
③「なぜダメだったか」の理由を深掘りする(Whyを繰り返す)
中間チェックで進捗が悪いとわかった場合、
「なぜ計画とのGAPが生まれたのか?何が原因なのか?」
を考えて原因の深掘りをすることが重要です。
行動計画通りに実行できなかったのか、実行したにもかかわらず別に要因があるのか、そもそも計画が無謀だったのか。
「なぜ、なぜ、なぜ」と原因を掘り下げる習慣を持ちましょう。
この時に、ロジックツリーを活用して、問題を要素分解することをお勧めします。
▶︎ ロジックツリー
Action:Checkで確認した状況について改善点を考える
- 同じことを繰り返さないこと
- 改善点はできるだけ1つに絞ること
①同じことを繰り返さないこと
問題をそのままにしてはいけません。
現状維持という考えこそが、店舗だけでなく、あなたの成長を止めてしまいます。
仮に改善策に詰まったとしても、何か一つでも、些細なことでもいいので、やり方を変えてみましょう。
②改善点はできるだけ1つに絞ること
一方で、一つの問題に対してあれこれと同時に改善策を打とうとしてしまう人もいます。
しかし、1週間単位でPDCAを回す場合、一度にたくさんのことをやろうとしてしまうと中途半端な結果で終わります。
それよりは、この1週間は1つのポイントに絞って改善に取り組み、ダメなら次はもう一つのやり方でチャレンジしてみよう、といった形で、効果が出そうなものから1期間に1つずつ取り組みます。
以上のポイントを押さえて、PDCAサイクルを回していきましょう。
ここで、「なんとなくやり方はわかったけど、実際にリラクゼーションサロンでPDCAを回している事例を教えて欲しい!」という人もいらっしゃると思うので、最後にリラクゼーションサロンでのPDCAサイクルを回す具体事例を解説します。
リラクゼーションサロンでのPDCAサイクル活用事例

リラクゼーションサロン店舗でのPDCAサイクル活用例を紹介します。
今回の例では、店舗の新規集客数を増やすことをゴールとします。
Plan:目標と現在のGAPを埋めるための計画を立てる
まずはゴール設定と現状分析を行い、新規集客における問題点と課題を選定します。
ゴールと現状
- GOAL:チラシ配布で月10名の新規顧客を獲得する
- 現状:店頭のチラシ配りで毎月600枚配っているが、戻りが平均月2件程度
- 問題点:チラシ配布数が少ない、チラシ配布での戻りが少ない
- 課題:チラシ配布数の増加、集客効果の高いクーポンの作成
設定した課題に対して、改善アクションを具体的な行動計画に落とし込みます。
行動計画
- チラシの配布枚数を増やす(目標:店頭30枚/日、ポスティング500枚/週)
・1週目に店長がスタッフにチラシ配りの方法をレクチャー
・店頭チラシ配布に加えて、近隣マンションへのポスティングを行う - クーポン内容の改善
・クーポン内容を初回体験しやすい「ボディケア40分2,980円」に変更。
・スタッフが○日までに内容変更を行う。
Do:計画を実行する
行動計画に沿って、実行していきます。
実行
毎日の店頭チラシ配布&ポスティングした枚数、チラシでの集客数をスプレッドシートに記録する(スタッフごとの配布枚数も計測する)
Check:中間チェックを行い、計画通りに進捗しているかを確認する
1週間経ったら検証の時間を作り、立てた行動計画が実行できたかどうか、実行した結果どうだったかを振り返ります。
中間チェック
- 1週間後に店長が進捗確認を実施。
- チラシ配布数・ポスティング枚数は計画通り進捗しているが、チラシでの戻り数が1週間で1件とショートしている。
- 「チラシは受け取っているが、集客に繋がっていない」と捉え、チラシ自体の魅力を向上させる必要がある、と考える。
Action:Checkで確認した状況について改善点を考える
中間チェックで出した仮説を元に、改善点を考えます。
改善点を考える
- チラシクーポンの「キャッチコピー」を改善点とし、よりターゲット層の潜在ニーズに刺さるようなフレーズに変更する。
- また、チラシに予約導線が「電話」しかないため、WEB予約の導線を作るために、クーポンに「予約ページヘのQRコード」を設置する。
Plan②:目標と現在のGAPを埋めるための計画を立てる
改善点を具体的な行動計画に落とし込みます。
行動計画
- キャッチコピーの変更
・○日までに店長がキャッチコピー案を3つ出す
・○日までにスタッフとコピー案について話し合い、1つに決定する - QRコードの設置
・○日までに店長がQRコードを作成
・○日までにスタッフが新キャッチコピーとQRコードを入れた新クーポンデザインを作成
このようにリラクゼーションサロン店舗では、PDCAを繰り返すことで課題を改善し、成果につなげていく行動が求められます。
まとめ

この記事でのまとめです。以下の要点を振り返りましょう。
- PDCAサイクルとは
狙った成果を出すために「PLAN(計画)→DO(実行)→CHECK(確認)→ACTION(改善)」のループを繰り返すこと。 - 失敗する店長の3つのパターン
(1)行動が伴わない、計画立てっぱなしタイプ
(2)振り返りをやらない現状維持タイプ
(3)計画しない、思いつき行動タイプ - PDCAサイクルを回す時の各ポイントを解説
・Plan:行動計画を月・週・日の各レベルまで落とし込む。5W2H。
・Do:日々の行動結果を記録する
・Check:週に1度は中間チェックを行う。進捗割れの原因を深掘りする。
・Action:次にやることを絞る。
店長として売上管理、スタッフ管理をする上で、PDCAサイクルの活用は避けては通れません。
なぜなら、店舗のさらなる成果を生み出し続けるためには、現状維持ではなく、「改善」が必要だからです。
この記事でPDCAサイクルについての理解を落とし込み、早速今日から実際に活用を始めていきましょう。
計画の立て方について深掘りしたい方は、リラクゼーションサロン店舗の計画の立て方を5ステップでまとめた記事があるので、計画立案に自信のない方はインプットしないと損しますよ。
▶︎ 【新人店長向け】リラクゼーションサロンの計画の立て方を5ステップで解説
最後までお読みいただきありがとうございました。
ちゃり